● 深夜の幕努菜ルルド
二人がけの席に向き合って座っている。
「ごめんね 昼間は」
「いや」
「怒ってるよね…」
「怒ってないよ」
「ほんとに?」
「そっちこそ怒ってるんじゃないの」
「あたし?あたしは別に… やっぱ急に 帰って悪かったなって それは言いたくて…」
「俺も あの時はなんか良くなかったと思う… よくわかんない んだけど 人として」
「人として…って なんか大げさっぽい ね」

彼女が笑う。 

「もっと成長しなきゃって思うよ 人として」
「そっか… じゃ、あたしもだね 人と して」

少しの静寂の後、彼がこう言った。

「時々さ… こうやって会って話そうよ… それならいいと思 う」
「うん あたしもいいと思う」
「何を話せばいいのかな」
「何だっていいよ、パソコンのことと か」
「興味ないんだろ」
「そんなことない、あの時はちょっと… 嫉妬した だけ」
「はは…なにそれ」
「だって、あたしよりパソコンの方が好 き でしょ」
「まあね」
「言うと思わなかった!もう信じられな い!」
「ははは… まあ座れよ」

二人は朝まで話し合った。